Jan 2010
[day1] バンコク初夜
タクシーに乗ることおよそ一時間、あまりにも小さい宿のため、運転手が全く見つけられないというトラブルに陥ったものの、車はなんとか宿に到着しました。僕の部屋は4人用の相部屋で、各個人に十分な大きさのロッカーとベッドが用意されています。holstelworldでの評価が非常に高かったところなので期待していたのですが、清掃もきれいに行き届いており、これから一週間は快適に生活が出来そう。なお宿の詳細についてはまた後日。
バックパッカーの聖地にて
とりあえず、自分の部屋にあるロッカーの中に荷物を収納したら、夕飯の時間。カオサン通りという、その手の人には有名すぎるバックパッカーの聖地的な通りまで、徒歩で15分程度とのことで、周囲の探検がてら歩いてみることにしました。周囲に点在する寺や、道をひっきりなしに走るトゥクトゥク(バイクのタクシー)に見とれていたら、あっという間にカオサン通りの入り口に差し掛かりました。
そこは、まさに絵に描いたようなバックパッカーの街。極彩色のネオン、屋台で作られる怪しげな食べ物、世界中からの旅人たち、至る所から溢れ流れてくるダンスミュージック、雰囲気は以前行ったことのある香港や台北に近いものがありますが、空気の濃度が圧倒的に違うように感じました。タイ語、英語、ドイツ語、フランス語、スペイン語、韓国語、中国語、日本語、世界中のありとあらゆる言語で繰り広げられる会話が聞こえてきます。しかも、さすが貧乏旅行者の聖地、料理がものすごく安い!屋台なら50バーツ、お店でも100バーツほどあれば、そこそこのモノを食べることができます。
しかし、僕はこのあまりにも外国人向けに作られてしまっている、この通りになんだか落ち着くことができず、軽く夕飯を食べただけで宿に戻ることを決意しました。午前のフライトのせいで睡眠不足だったこともありましたし、何通か送っておきたいメールもあったのです。
奇妙な邂逅
宿への帰り道、カオサンを抜けてしばらく歩いていたところで信号待ち、小柄なオッサンが何やらタイ語で話しかけてきます。「ごめん、現地の人じゃないんで」とりあえず英語で返す僕。「あぁ、そうなのか、すっかりタイ人に見えたんでね」とオッサンが意外と流暢な英語で返します。カメラをぶら下げている僕がどうタイ人に見えたのか分かりませんが、歩く方向も同じようなので、軽く世間話をしていたところ、何でも英語の先生をされているようで、別の地方から大晦日の観光でバンコクにやってきているとのこと。名前をスチャドと言うそうです。
スチャド曰く、大晦日の晩にはいろいろと祭りがあるので彼はそれを毎年見に来ているとのだそう。僕は今から宿に帰るということを伝えると「そんなのは勿体無い、一緒に寺を見てまわろう」と僕を引き止めます。これが客引きと言う奴なのかと、まずは疑ってかかってみますが、このあたりには確かに寺も多いので、少しだけ付いて行ってみる事を決意。歩いて5分くらいのところにある「このあたりで一番大きなお寺」に行くと、実際に夥しいほどのタイ人参拝客の姿が僕の視界に入ってきたのです。外国人とそれを相手に商売をしている人たちしかいなかったカオサン通りと違い、そこには確かにタイの人々の暮らしがありました。皆が必死に祈りを捧げている姿に胸を打たれます。僕も彼らと一緒になり、今後の旅の無事を仏様に祈りました。と、同時にこのスチャドというオッサンも意外と信用出来る人なのかもしれないという気がしてきたのです。今度は少しトゥクトゥクに乗って、王宮付近の祭りを見に行こうというので、さらに付いて行ってみることにしてみました。
ローカルなバンコク
初めて乗ったトゥクトゥクは、蒸し暑いバンコクの夜を颯爽と駆け抜けます。トゥクトゥクは外国人に対するボッタクリで悪名高いのですが、今回に限って言えば現地人が隣にいるので、その点も安心。頬に当たる夜風が心地よく、光り輝く景色が流れて行く様を見ていると、まるで自分が小説の主人公になってしまったような錯覚に陥りそうでした。時間にしてほんの5分程度だったでしょうか。それでもこのバイクの荷台に椅子と屋根をつけただけの乗り物が、数時間前に座っていたファーストクラスの座席よりもよっぽど刺激と興奮に満ち溢れていていたことは確かです。あまりに遠くまで連れ出されそうになったら流石に逃げるか、などと心配事をした瞬間に目的地が視界に入りました。
トゥクトゥク代はスチャドの奢り、帰りは僕が払うからと念を押しながら、辺りを歩いてみると、目の前には大きなカーニバルが。色とりどりのイルミネーション、山車、的屋がところ狭しと並び、売り子が何やら大声で叫んでいます。ちなみに、ここにもほとんど外国人らしい人影は殆どなく、自分だけが少しだけ浮いた存在。有名らしいタイポップの歌手が歌っているステージの脇では、大勢のタイ人たちが爆音のアンプから吐き出される音に身を任せて思い思いに体を揺らしていました。あのカオサンからの帰り道、この変なオッサンに声をかけられていなければ、きっとこんな光景を見ることもなく、宿でゴロゴロしていただけだったんだということを考えると、この奇妙な邂逅と自分の運に感謝したくなりました。
場末のキャバクラで
その後、スチャドは毎年訪れる馴染みのバーに飲みに行くとのこと。完全にローカルな場所だけど、会計はシェアでいいから是非一緒に行かないかと誘われ、少しだけならと一緒に行ってみることに。またもやトゥクトゥクに5分程度揺られて辿り着いた先は場末のキャバクラのようで、店構えからしてかなり猥雑な雰囲気。店内に入るとおねぇちゃんたち(多分オカマではない)が隣に座ってお酒をいれてくれるようなところでした。うーむ、若干危険な香りが。ただ、周りには一般のタイ人客も相当数いるので、全体が危険ということでもなさそうです。大体の予想コストを確認しつつ、スチャドがお勧めだと頼んでくれたラムコークを煽ります。そして、新年へのカウントダウンはお店の皆でバカ騒ぎをしながら。言葉もほとんど通じない異国の地でこんな年の瀬の迎え方をするなんて、出発前にはまるで想像もしていませんでした。
そして3時間程度の滞在ののち、そろそろ帰ろうかと言うことでお会計の時間。出てきた請求はお二人様合計でなんと約30,000バーツ(およそ8万円強)。おいおい、若干の覚悟はしていたけど、なんでこんなタイの場末のキャバクラが日本価格なのよ。