Oct 2010
[day138] イスタンブール的生活
さて、閑話休題。イスタンブールの観光話に戻りましょう。エジプトから北上しながら旅をしてきた僕らにとって、イスタンブールはもう僕らの知っている中東の街ではありません。整備された道路に、近代的なビル群、そして素肌を露出しながら歩く若い女性たち。トルコに入ってからはアルコール類の入手もとても容易になりました。レストランには大抵お酒が置いてありますし、バーや酒屋もそこらじゅうにあります。おまけにイスタンブールのバーにはこんなポスターが貼ってありました。残念ながら豚肉はまだ非常に限られたところでしか食べられないようですが、厳しいイスラムの教えの中で生きている国とは明らかに違う雰囲気がそこにはありました。
対してヨーロッパ側からイスタンブールに入って来た人たちは、みな口を揃えてもはやここはヨーロッパではないと言います。街中に林立する巨大なモスクの尖塔、オープンカフェで水煙草を吸いながらボードゲームに興じる人たち。マーケット、露店、ケバブを始めとする特徴的な食事。人々の顔つきもヨーロッパのそれとは雰囲気が違いますしね。ではイスタンブールとは一体何処の地方なのか?と考えると、もうイスタンブールはイスタンブール、何処にも属さないオンリーワンということでいいような気がしてきました。
今回は2週間程度の比較的長期な滞在だったので、様々なところを歩き回りました。そこまで「観光」と意気込むのでもなく、のんびりと散歩をしながら時折写真を撮る程度で。多くの人が暮らす大都会イスタンブールでは、観光者として気を張るのではなく、そこに暮らしているように自然体で生活するのがここち良かったです。商店街でウィンドウショッピングしたり、スポーツバーに一人でサッカーを見たりとか。
そんな中での僕のお気に入りのスポットは新市街と旧市街を繋ぐ、ガラタ橋というところ。夕方ごろにここを歩くと、蒼から橙そして紺へと移る空をバックにカモメがゆっくりと風に乗って飛んでいて、何とも言えない哀愁が漂っているんですよね。しかも、日没は対岸のモスク越し。夕飯はそのまま橋の下にあるシーフードレストランで金角湾に反射する夜景を眺めながら取るのもアリですね。他のエリアよりも若干高めの設定ですが、中にはリーズナブルなお店もあるのでメニューを見ながら予算に合ったお店を探しましょう。
そう、以前のエントリーでも触れていますが、トルコと言えば日本人にはお馴染み、世界三大料理の発祥の地。ギョレメでの料理もとても美味しかったのですが、特にイスタンブールは港町でもあるので近海で取れた魚介類が豊富なのです。ケバブなどに比べて若干高級な部類に入るので毎日のようには食べられませんでしたが、それでもシンさん&トモコさんと別れる前夜に一緒に食べた魚の塩焼きのジューシーさと言ったらもう。日本以外で美味しい魚の塩焼きにん出会えると思っていなかったのでこれは感動でした。もう少し予算が潤沢だったらロブスターとかにも手を出したかったんですけどねぇ。再訪する機会があったらぜひ試してみたいものです。
そしてもう一品トルコ料理として欠かせないのが、焼きたてのトルコパンです。大抵のレストランでは何か一品頼むとパンが無料でついてくるのですが、これがほぼ例外なくモチモチフカフカで美味しいのです。トルコのあとも、様々な「パンが美味しい」と言われる国を旅することになるのですが、僕の好みではトルコのパンが一番美味しかったと自信を持って言えますね。サラダとディップソースを頼んでパンをおつまみにビールを飲むのが体にも財布にもヘルシーでよくやっていました。
トルコでのアトラクションと言えば、やはりハマムでしょう。ダマスカスで感動して以来、ハマ、ギョレメと事あるごとに利用してきたのですが、最後に本場のイスタンブールで締めるというにはいい選択だったかと。今回はシンさんと一緒に、地元の人御用達の伝統的なハマムに行ってみました。蒸気で熱せられた大理石の上に寝転がっていると体中から玉のように噴き出る汗もろとも、旅の疲れまで流れ落ちるようです。そして、今回の目玉は垢すり。髭もじゃ胸毛ボーボーのトルコ人のおっさんに体を摩られ呻き声を漏らす日本人男子2名。文字にすると何やら怪しい表現になってしまうのですが、今までに経験した中でも最強にパワフルで痛気もちさ全開。ものすごい量の垢がこぼれ落ち、シャワーを浴びた後の肌のスベスベ感は尋常じゃなかったですよ。
そして、繰り返しますがここはトルコ。そうアルコールの飲める国です。さすがにハマムは伝統的な施設のためアルコール類は置いていなかったのですが、ここはグッとソフトドリンクの誘惑を断ち切り、黄金の液体を求めて街を歩きました。昼下がりに飲む、トルコの国民的ブランド、エフェスドラフトはたまらなくウマいです。思わず、くはぁとCMのような表情でビールを飲み干してしまいました。
それにしても、今更ながらほんとに居心地のいいところでしたね、イスタンブールは。物価もそこまで高くなく、人々も親切で、ネット環境も申し分なし。たまに客引きがうるさい時がありますけど、エジプト付近の酷さを知っている身としては可愛いものです。中東旅行の終着地としてしっかりと羽根を伸ばすことができました。そして次の目的地は、中東は中東でも別世界、遂にイスラエルへ突入です。